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SDGsに貢献?ひこばえ(再生二期作)とは?メリット・栽培ポイント

稲刈り直前の田んぼとそれを手入れする農家さんの画像

地球温暖化の進行や人手不足が深刻化するなか、「一度の田植えで二度収穫できる」として注目を集めているのが、ひこばえ(再生二期作です。
この農法は、省力化だけでなく、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献する新しい稲作スタイルとして研究が進められています。
この記事では、ひこばえ農法の基本、メリット・リスク、そして実際の栽培ポイントをわかりやすく解説します。


ひこばえ(再生二期作)とは?

「ひこばえ」とは、稲刈り後の切り株から新しく芽が出る部分を指します。
再生二期作とは、一度田植えした株から出る“ひこばえ”をそのまま育て、二回目の収穫を行う方法です。

従来の二期作(再度苗を育てて植え直す)とは異なり、育苗・移植が不要なため、省力的で環境にもやさしいのが特徴です。
農研機構などでは「にじのきらめき」などの品種を使った実証試験が進められ、刈り取り後の再生スピードや収量性がデータとして報告されています。


なぜ注目されているのか ― 背景と可能性

🌾 温暖化による生育期間の延長

温暖化により春の立ち上がりが早く、秋の冷え込みも遅くなる地域が増えています。
その結果、再生二期作に必要な生育期間が確保できる地域が拡大しています。

👩‍🌾 労働力不足とコスト削減

苗づくりや移植作業を省略できるため、人手不足の地域や高齢化農家にとって作業負担を大幅に減らせる点が魅力です。

🌏 SDGsへの貢献

再生二期作は、CO₂削減・燃料使用の低減・水資源の有効利用につながる技術でもあります。
「気候変動への適応」「持続可能な農業」「資源効率化」という観点から、SDGsの目標2(飢餓をゼロに)や目標13(気候変動対策)にも関連しています。


主なメリット

メリット 内容
🌱 省力化・省コスト 育苗・田植え・代かきが不要で、作業回数と燃料を削減できる。
💧 環境負荷の低減 機械稼働や肥料使用の最適化でCO₂排出を抑制できる。
🌾 増収の可能性 一期作と二期作を合わせて、反収900kg以上を記録した事例も(農研機構試験より)。
🕊 リスク分散 一期目が天候不順で減収しても、二期目で補える可能性がある。

栽培のポイント

1. 一期目の刈り取り高さがカギ

ひこばえは切り株の節から再生するため、地際から約40cm前後の高刈りが理想的です。再生力が高まり、芽の発生がそろいやすくなります。

2. 肥料は二期分を見越して

再生期の成長には多くの養分が必要です。通常より窒素肥料を1.5〜2倍程度多めに設計し、出穂前後に追肥を行いましょう。

3. 水を切らさない

ひこばえは乾燥に弱いため、刈り取り後も田面を湿潤状態に保つことが重要です。水路の維持や灌漑計画もあわせて確認しましょう。

4. 刈り取り・脱穀機械の確認

二期目は稈(かん)が短くなる傾向があるため、汎用コンバインなどを使用すると収穫作業が安定します。


導入する際の注意点

  • 寒冷地では再生期の気温が不足し、成熟が難しい場合がある。
  • 二期目の米は品質・食味がやや落ちるケースもあり、販売戦略に工夫が必要。
  • 長期的には地力維持のため、有機物の還元や輪作を併用することが望ましい。

実践事例:九州・福岡の試験では高い成果も

農研機構九州沖縄農業研究センターでは、「にじのきらめき」を用いた実証で2期合計944kg/10aの収量を記録。
とくに「4月植え・高刈り」条件で成果が高く、省力と収益性の両立が確認されています。
この結果から、温暖な地域では実用化が現実的な技術として期待が高まっています。


まとめ:未来の稲作を支える“ひこばえ農法”

ひこばえ(再生二期作)は、温暖化に適応しながら持続可能な農業を実現する技術です。
一度の田植えで二度収穫できる、省力で環境にやさしい稲作モデルとして注目されています。

ポイントまとめ:

  1. 一度の田植えで二度収穫できる省力技術
  2. 気候変動を逆手にとる新しい稲作モデル
  3. SDGsに貢献する持続型農業への一歩

生産コストを抑えながら環境にも優しい稲作を目指すなら、「ひこばえ農法」は今後ますます注目される選択肢になるでしょう。

 

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水稲カメムシ被害、全国で33億円規模に ― イノシシに次ぐ大きさ【2023年産推計】

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2023年産の水稲では、「カメムシ類」による被害が全国で33億円規模に達したと農水省が発表しました。被害額はシカ(70億円)、イノシシ(36億円)に次ぎ、鳥獣害の中でも大きな割合を占めています。

特に水稲カメムシは登熟期の稲穂を吸汁し、**斑点米(品質低下の原因)**を引き起こすため、生産者にとって深刻な脅威となっています。


主な鳥獣害との比較

  • シカ:70億円

  • イノシシ:36億円

  • 水稲カメムシ:33億円

  • カラス:13億円

被害額では依然としてシカ・イノシシが突出していますが、カメムシ被害は水稲に集中するため、農家の実感としては「質的ダメージ」がより大きい点が特徴です。


農家への影響と課題

水稲カメムシの被害は、外観品質を損なうことで米の等級を下げ、販売価格を大きく押し下げます。特に指定産地やブランド米では市場への影響も深刻です。

  • 収入減少:1等米から2等・3等に格下げされると、価格差は1俵あたり数千円〜1万円以上に及ぶ場合も。

  • 防除コスト増:農薬散布の回数増加やタイミング調整が必要となり、経営負担が増える。


今後の対策

農水省は、鳥獣害対策と並行してカメムシ防除の適期散布や栽培管理の徹底を呼びかけています。また、地域ごとに発生予測や発生状況の共有を強化し、被害の抑制を目指しています。

さらに、ASEAN諸国との食料安全保障協力も進められており、国内の安定供給と国際的な備えが今後の課題となります。


まとめ

  • 2023年産水稲カメムシ被害は全国で33億円に。

  • イノシシ・シカに次ぐ規模で、農家に深刻な経済的影響。

  • 防除の適期判断と地域連携が重要

  • 日本の食料安全保障に直結する課題として注目される。

トヨタ式に学ぶ!農業経営を加速させる「現場力」と「経営力」の両輪

トヨタ式両輪を示す車のシャシーの画像


(出典:日本農業新聞 2025年10月1日付 経済リポ「現場と経営は両輪」/トヨタ生産方式改革プロ代表 山﨑謙二郎氏 談)


現場と経営は車の両輪

山﨑氏は「現場力と経営力は車の両輪のようなもの。両方がかみ合って初めて成長が加速する」と語っています。
片方だけでは前に進みにくく、両方をそろえることが持続的発展の鍵です。


トヨタ式「現場力」とは

  • 4S(整理・整頓・清掃・清潔)

  • 作業手順の標準化

農業で言えば「農具・資材の整理整頓」「作業の手順書化」がこれに当たります。


トヨタ式「経営力」とは

  • 生産販売計画の立案

  • コストの見える化

  • 人材育成

農業では「作付け計画」「収支管理」「従業員や家族のスキルアップ」に直結します。


農業への応用

農業経営でも、現場改善だけに偏ると「効率は上がるが儲からない」状態に。
逆に経営数字だけに偏ると「現場が疲弊して続かない」状態になります。

👉 両輪を意識することで、持続可能な農業経営が実現できます。

 

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ネギの驚くべき力|健康効果と病気予防、家庭菜園での育て方のコツ

食べ頃の白ネギの画像

ネギは日本の食卓に欠かせない存在ですが、ただの薬味ではありません。免疫力を高める健康効果や、家庭菜園で他の作物と一緒に植えることで病気を防ぐ「コンパニオンプランツ」としての役割もあります。さらに、小ネギは根を残して収穫すれば、何度でも再生できるお得な野菜。今回は、ネギの魅力と育て方のコツを紹介します。


ネギの健康効果|免疫力アップと生活習慣病予防

ネギには「アリシン」と呼ばれる成分が豊富に含まれており、これは殺菌・抗菌作用に優れています。風邪予防や免疫力アップに効果的で、昔から「風邪をひいたらネギを食べろ」と言われるのはこのためです。
さらに、アリシンは血流を改善し、動脈硬化や高血圧の予防にも役立つと考えられています。日常の食事にネギを取り入れることで、体を内側から整えることができます。


ネギは病気予防の味方|コンパニオンプランツとしての活用

ネギは「混植」することで他の作物の病気を予防する効果があると言われています。例えば、イチゴやニンジン、レタスと一緒に植えると、病害虫を抑制する働きが期待できます。
これは、ネギの根から分泌される物質が病原菌を抑える効果を持っているため。農薬に頼らずに病気を減らせるので、家庭菜園に取り入れる人が増えています。


小ネギは再生栽培が可能|何度でも収穫できる

小ネギ(万能ネギ)は、根を残して葉の部分を切り取ると、そこからまた新しい芽が伸びてきます。水耕栽培でも、土でも同じように繰り返し収穫できるため、家庭菜園初心者におすすめです。
スーパーで買った小ネギを水に浸けて再利用する「再生栽培(リボベジ)」も人気で、食費の節約にもつながります。


まとめ

ネギは健康にも良く、病気予防にも役立つ万能野菜。さらに小ネギなら根を残せば何度でも収穫でき、家庭菜園に最適です。普段の食事だけでなく、菜園づくりや家庭での節約にも大きな効果を発揮します。ぜひ家庭でも植えてみませんか?

 

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畑に花を植えると野菜が守られる?マリーゴールドとナスタチウムのコンパニオン効果

マリーゴールドの花が咲き乱れている画像

畑や家庭菜園に咲く花。実は「きれいな彩り」だけでなく、野菜を虫から守る役割を果たすことをご存じでしょうか?
マリーゴールドナスタチウムといった花は、見た目を楽しみながら害虫対策にもなる「コンパニオンプランツ」として注目されています。今回はその効果と活用法を紹介します。


マリーゴールドとセンチュウ対策

マリーゴールドは、古くから「畑の守り花」と呼ばれてきました。
その理由は、根から出る チオフェン類という成分 にあります。この成分が土壌中の ネコブセンチュウ を嫌わせる働きを持ち、トマトやナス、キャベツといったセンチュウ被害を受けやすい野菜の生育を助けるのです。

特に効果が高いとされるのが、フレンチマリーゴールド(Tagetes patula)
畝の端や株間に植えると、センチュウ被害を軽減することが期待できます。さらに、花が咲けば畑も華やかになり、目にも楽しい効果があります。


ナスタチウムとアブラムシ対策

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もう一つおすすめしたい花が、**ナスタチウムキンレンカ)**です。
赤やオレンジ、黄色の鮮やかな花を咲かせるこの植物は、実は「トラッププランツ」として知られています。

アブラムシはナスタチウムを好んで集まるため、代わりに野菜への被害を抑えることができるのです。
「見た目を楽しみながら、害虫を引きつける」という、一石二鳥の働きをしてくれる頼もしい存在です。


活用のコツ

  1. 株間や畝端に植える
     野菜と一緒に植えて、虫の侵入を防ぎやすい配置に。

  2. 複数の花を組み合わせる
     マリーゴールドでセンチュウ対策、ナスタチウムでアブラムシ対策と役割を分けると効果的。

  3. 他の防除方法とあわせる
     輪作や防虫ネットなどと併用すれば、より安心して野菜を守れる。


まとめ

  • マリーゴールド:根の成分でネコブセンチュウ対策

  • ナスタチウム:アブラムシを引き寄せて野菜を守る

  • 見た目も華やかで、畑がぐっと楽しくなる

花を植えることで、畑はただ美しいだけでなく、野菜を守る知恵のある空間へと変わります。
家庭菜園や小さな畑から、ぜひ取り入れてみてください。

 

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有機酒類の輸出入が解禁!地域農業と酒造に広がる新たなチャンス

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はじめに

2025年、農林水産省は「有機酒類」の輸出入を可能にする制度改正を発表しました。これまで制度上の制約により、海外市場へ有機日本酒や有機ワインを輸出することが難しかったのですが、今回の改正によって新たな道が開かれました。
本記事では、この制度改正の概要と、地域農業や酒造業にどのようなチャンスが広がるのかを解説します。


制度改正の背景

これまで、日本国内で「有機JAS認証」を受けた農産物は存在しても、酒類については輸出入に法的制約がありました。
そのため、有機米を原料にした日本酒や、有機ぶどうを使ったワインも、海外市場で「有機」として販売することが難しい状況が続いていました。

しかし、健康志向・サステナブル志向の高まりにより、海外市場では「オーガニック酒類」へのニーズが拡大。日本の有機農業を支える制度の改善が求められてきたのです。


今回の改正で何が変わるのか

  • 有機JAS認証を受けた原料でつくられた酒類も、輸出入の対象に

  • 外市場において「オーガニック」として正式に流通可能に

  • 海外認証との整合性が取りやすくなり、販路拡大が現実的に

これにより、地域の有機米・有機ぶどうの需要が拡大し、農業と酒造の連携が強まる可能性があります。


地域農業と酒造へのメリット

1. 地域ブランドの強化

有機酒類は「付加価値商品」として海外で注目されやすく、地酒やワインのブランド価値を高めるチャンスです。

2. 農家の販路拡大

有機米や有機ぶどうなど、これまで国内消費中心だった作物が、輸出用の原料として需要拡大。農家の新しい収益源につながります。

3. 観光・インバウンドとの連携

海外の消費者に「日本の有機酒類」が認知されれば、訪日観光客が酒蔵やワイナリーを訪れるきっかけとなり、地域振興にもつながります。


課題と今後の展望

一方で、課題も少なくありません。

  • 輸出のための認証取得や手続きコスト

  • 海外の嗜好に合った商品開発

  • 安定的な供給体制の確保

これらを乗り越えるためには、農業者と酒造業者、行政や商社が一体となった取り組みが求められます。


まとめ

有機酒類の輸出入解禁は、日本の農業と酒造業にとって大きな転換点となります。
地域農業が育てた有機米や有機ぶどうが、酒造を通じて世界に羽ばたくことで、新しい収益源を生み出すだけでなく、地域ブランドの発信にもつながります。

今後は「輸出を見据えた有機栽培」「海外市場を意識した商品づくり」が重要になっていくでしょう。

 

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農業近代化資金とは?制度の概要・活用のメリットと課題をわかりやすく解説

古いがよく整備されたトラクター。

農業経営に携わる人なら一度は耳にする「近代化資金」。
これは、農業者が新しい設備や機械の導入、経営改善のために低利で利用できる公的融資制度です。特に、担い手農家や規模拡大を目指す人にとっては、資金繰りを支える大きな助けになります。

一方で、制度を正しく理解していないと「借りにくい」「返済の負担が重い」といった課題も生じやすいのが現実です。この記事では、近代化資金の基本的な仕組みと、どのような場合に活用しやすいのか、そして注意すべきポイントを整理していきます。


本文構成(見出し+要約)

1. 近代化資金とは?

  • 農業者や農業法人が対象となる低利融資制度

  • 国や自治体が利子補給を行う場合があり、実質的な負担は小さい

  • 使途:機械導入、施設整備、経営改善に必要な資金など

2. 活用しやすいケース

  • ラクターやコンバインなど高額な農機を購入する際

  • 施設園芸(ハウス、貯蔵庫など)の設備投資

  • 農地の基盤整備や大規模化を進める経営改善計画

3. メリット

  • 一般融資よりも低金利で長期返済が可能

  • 融資限度額や期間が比較的柔軟で、規模拡大を目指す農家に有利

  • 農協(JA)などを通じて利用できるため相談がしやすい

4. 課題・注意点

  • 申請に手間がかかり、審査に時間を要する

  • 借入額が大きくなると返済負担が重くなる

  • 経営計画が甘いと、せっかくの融資が逆に経営圧迫につながる危険性

  • 農業情勢や価格変動リスクへの対応も必須

5. まとめ

近代化資金は、農業の成長や安定経営を支える重要な制度です。
ただし、「借りやすさ」だけに注目せず、将来の返済計画やリスク管理も合わせて考えることが欠かせません。上手に活用できれば、農業の未来を大きく切り拓く力となります。

 

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