2025-01-01から1年間の記事一覧
はじめに 「百姓」という言葉を聞くと、多くの人は“農家”を思い浮かべるでしょう。しかし、もともとの「百姓」は、もっと広く、もっと深い意味を持っていました。その語源をたどると、現代の私たちにも通じる“自立した生き方”のヒントが見えてきます。 「…
地方での就農を考えている人にとって、畑を持つことよりも大切なのが、人とのつながりです。特に、Uターン(地元出身)と違い、Iターン就農者はゼロからのスタート。「祖父の遺した畑だから、地元の人が助けてくれるだろう」──そう考えるのは危険です。 むし…
昔の日本では、どこの家庭でも野菜を育てていました。畑がなくても、庭の片隅や軒下に小さな畝を作り、季節ごとに大根やナス、きゅうりを収穫していたのです。 今ほど豊かではなくても、「食べるものは自分でつくる」という安心感がありました。それがいつの…
畑を見ていると、「この土、フカフカしてるな」と感じる瞬間があります。それは単に柔らかいというだけでなく、**植物がよく育つ“良い土”**であるサインです。その秘密は、「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」という土の仕組みにあります。 ■ 「団粒構造」と…
秋になると舞い落ちる落ち葉。実はこれ、昔から農家にとって“宝”でした。化学肥料がない時代、人々は自然の循環を上手に利用して、落ち葉を堆肥として活かしていたのです。 ■ 古くからの知恵とサステナブルな発想 日本では江戸時代より前から、山や林の落ち…
草刈り。正直、めんどうです。暑い時期は特に、刈っても刈ってもすぐに伸びます。近年では温暖化の影響もあって、雑草の成長スピードが以前より確実に早くなっている気がします。 伸びてからでは、手遅れになる 草というのは、一度成長しきってからでは太く…
厄介な虫トップ3 1. アブラムシ 野菜・果樹・花など、ほとんどの作物に発生する代表的害虫。植物の汁を吸って弱らせ、ウイルス病を媒介することもあります。繁殖力が非常に強く、温暖期には爆発的に増殖します。 2. コナガ アブラナ科(キャベツ・ブロッコリ…
草木灰(そうもくばい)は、古代から人々が畑や田んぼに使ってきた最も原始的でありながら理にかなった肥料です。化学肥料が登場するはるか以前、農家は燃やした草木の灰を田畑にまき、土の力を取り戻してきました。 ■ 古代から続く知恵 弥生時代の遺跡から…
〜自然の循環から生まれた肥料の知恵〜 リンの起源と古代の知恵 植物の生育に欠かせない三大栄養素のひとつ「リン」。古代の人々は、科学的な知識がなくても、動物の糞を土に混ぜると作物がよく育つことを経験から知っていました。 動物の糞には、リン・窒…
かつての農業は「生活のための仕事」でした。 しかしいま、農業は「ビジネス」として再定義されつつあります。 それは単なる“儲け”の話ではなく、「継続可能な仕組みをどう構築するか」という本質的な問いでもあります。 1. 農業のビジネス化とは何か 農業の…
はじめに:現代の“せわしなさ”と、畑の時間 スマホの通知や仕事の予定に追われる毎日。気づけば、いつも何かを「早く終わらせなきゃ」と焦っていませんか? けれど、畑に出ると不思議なことに、時間の流れが変わります。どれだけ急いでも、芽は早く出てくれ…
2025年、全国の米づくりに新しい動きが見え始めています。政府が長年続けてきた「作付指標(さくつけしひょう)」――いわば米づくりの“目安表”が、今年見直しの時期を迎えました。 この記事では、新聞等で話題になった「米の作付指標見直し」をわかりやすく解…
■ 古くから伝わる「骨の肥料」 昔の人々は、動物の骨にも「命の栄養」が宿っていると考えていました。狩猟や畜産が行われていた時代、余った骨を焼いて砕き、畑にまくことで土が肥えることを経験的に知っていたのです。 化学肥料がなかった時代、人々は観察…
️ 1945〜1955年:GHQ改革と「自作農」への転換 戦後、GHQ(連合国軍総司令部)は 農地改革 を実施。 大地主が所有していた農地を国が買い上げ、小作農に安価で売り渡し。 これにより、日本の農家の約9割が「自作農」へ。→ 戦前の封建的な構造を一掃し、「農…
最近、スーパーで見かける「国消国産」という言葉。実はこれ、「国産品を消費しよう」というだけでなく、**“自分たちが食べるものは、自分たちの国でつくる”**という考え方を表しています。地元で生まれた食を、地元で支える。この循環が、日本の食料自給率…
「霜に当たると甘くなる」——冬野菜に関してよく聞く言葉ですが、なぜそうなるのでしょうか?実はこれは、野菜が**寒さから身を守るために行う“防御反応”**なんです。 【1. 霜が当たると何が起こる?】 朝晩の冷え込みで霜が降りると、野菜の体内では凍結防止…
■ はじめに:水が多いほど良い、は間違い 畑や水田で「水を切らさないように」という意識は大切ですが、過剰な水分は根の呼吸を奪い、病害の温床になります。特に近年は集中豪雨が増え、排水不良による根腐れ・立枯病・フザリウム病の発生リスクが高まってい…
野菜の価格は、天候や季節の影響を強く受けます。たとえば長雨や猛暑で生育が悪くなれば、出荷量が減って価格は上がります。逆に、天候が安定して豊作になると、供給が増えて価格は下がります。 市場の原理は単純です。供給が増えれば価格は下がり、減れば上…
はじめに:初めての草刈り、緊張しますよね 休日の地域奉仕で「今度は草刈りをお願いします」と言われると、少しドキッとしますよね。草刈機は便利ですが、正しい使い方を知らないと危険です。この記事では、初めてでも迷惑をかけず、安全に作業できるよう…
「3等ですね。」 最近では6月もすでに暑くなってきています。そんな中、田植えを行い、畦の草刈りも例年回数が多くなってないか!? と思いつつなんとか10月になり、まだまだ暑い日が続くなか、刈りとった大切なコメ。 暑い中汗だくになりながら、JAに持ち…
近年、地球環境への配慮やSDGs(持続可能な開発目標)の広がりとともに、「緑肥(りょくひ)」が改めて注目されています。緑肥とは、畑に作物を育ててからそのまま土にすき込み、肥料や有機物として活用する植物のことです。代表的なものに、ヘアリーベッチ…
【注意喚起】農作業事故の実態と予防策:年間236人、主因は機械の転倒と熱中症 日本の農業現場では、毎日「ヒヤリ・ハット」が起きています。令和5年(2023年)の 農作業中の死亡者は236人。うち62%が農業機械作業、機械・施設以外では 熱中症が最多でした…
地球温暖化の進行や人手不足が深刻化するなか、「一度の田植えで二度収穫できる」として注目を集めているのが、ひこばえ(再生二期作)です。この農法は、省力化だけでなく、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献する新しい稲作スタイルとして研究が進められ…
2023年産の水稲では、「カメムシ類」による被害が全国で33億円規模に達したと農水省が発表しました。被害額はシカ(70億円)、イノシシ(36億円)に次ぎ、鳥獣害の中でも大きな割合を占めています。 特に水稲カメムシは登熟期の稲穂を吸汁し、**斑点米(品質…
(出典:日本農業新聞 2025年10月1日付 経済リポ「現場と経営は両輪」/トヨタ生産方式改革プロ代表 山﨑謙二郎氏 談) 現場と経営は車の両輪 山﨑氏は「現場力と経営力は車の両輪のようなもの。両方がかみ合って初めて成長が加速する」と語っています。片方…
ネギは日本の食卓に欠かせない存在ですが、ただの薬味ではありません。免疫力を高める健康効果や、家庭菜園で他の作物と一緒に植えることで病気を防ぐ「コンパニオンプランツ」としての役割もあります。さらに、小ネギは根を残して収穫すれば、何度でも再生…
畑や家庭菜園に咲く花。実は「きれいな彩り」だけでなく、野菜を虫から守る役割を果たすことをご存じでしょうか?マリーゴールドやナスタチウムといった花は、見た目を楽しみながら害虫対策にもなる「コンパニオンプランツ」として注目されています。今回は…
はじめに 2025年、農林水産省は「有機酒類」の輸出入を可能にする制度改正を発表しました。これまで制度上の制約により、海外市場へ有機日本酒や有機ワインを輸出することが難しかったのですが、今回の改正によって新たな道が開かれました。本記事では、この…
農業経営に携わる人なら一度は耳にする「近代化資金」。これは、農業者が新しい設備や機械の導入、経営改善のために低利で利用できる公的融資制度です。特に、担い手農家や規模拡大を目指す人にとっては、資金繰りを支える大きな助けになります。 一方で、制…
はじめに 農業は、一人の農家や一世代だけの営みではありません。地域全体で築き上げ、先人から受け継ぎ、未来へ渡していく大きな流れです。短期的な利益を追うだけでは、この流れは途切れてしまいます。「今だけ・金だけ・自分だけ」の発想ではなく、地域と…