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農作業事故の実態と予防策|年間236人が犠牲に

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【注意喚起】農作業事故の実態と予防策:年間236人、主因は機械の転倒と熱中症

日本の農業現場では、毎日「ヒヤリ・ハット」が起きています。令和5年(2023年)の 農作業中の死亡者は236人。うち62%が農業機械作業、機械・施設以外では 熱中症が最多でした。さらに65歳以上が86%を占めています(農林水産省調べ)。

農作業事故の現状と数字

  • 年間死亡事故数:236人(前年より2人減)
  • 区分別内訳:機械作業 147人(62.3%)/施設作業 6人(2.5%)/その他作業 83人(35.2%)
  • 年齢別:65歳以上202人(85.6%)
  • 主な原因:転倒・転落・熱中症
  • 発生時期:7〜9月に集中

JA共済の調査では、軽症を含む事故件数は年間約6.4万件(1日約180件)にも上ると推計されています。つまり「ヒヤリ・ハット」は毎日どこかで起きているということです。

主な事故原因とパターン

原因 内容
転倒・転落・横転 ラクターや運搬機の斜面走行、バランス崩れなどで発生。
巻き込まれ・挟まれ 刈払機・コンバインの回転部やベルトに巻き込まれる。
熱中症 高温下の単独作業で多発。死亡例も多数。
高所作業中の墜落 脚立・ハウス内作業での踏み外し事故。
家畜関連事故 牛などに蹴られ・押されるなどのケースも。

なぜ事故が多いのか?

  1. 高齢化と単独作業:判断・反射力低下、単独作業がリスクに。
  2. 斜面や不整地での作業:不安定な環境が転倒の原因に。
  3. 古い機械・整備不良:安全ガード不備、ブレーキ不調など。
  4. 暑熱環境と疲労:真夏の炎天下で熱中症が命取りに。

今日からできる予防チェックリスト

◎ 機械操作前

  • ROPS(安全フレーム)を立て、シートベルトを装着
  • エンジン停止・輪止め・ブレーキ点検を徹底
  • 斜面は「最小速度+無理な旋回を避ける」
  • 古い機械は連結部・回転部を重点チェック

◎ 作業中

  • 刃物・回転部はカバー必須
  • 清掃・詰まり取りは「エンジン停止+キー抜き」
  • 脚立・はしごは「平坦+固定」で使用
  • 防護手袋・ヘルメット・安全靴を着用

熱中症対策

  • 朝夕の涼しい時間帯に作業を集中
  • 水分・塩分を予防的に補給
  • 複数人での作業を推奨

季節ごとの注意ポイント

  • 春〜夏:草刈り・防除・畦畔作業中の滑落や熱中症
  • 秋:収穫機械の詰まり対応時の巻き込まれ
  • 冬:凍結路面での転倒・横転

「ヒヤリ・ハット」の見える化

「ヒヤリとした」「危なかった」という経験を放置せず、家族や仲間で共有しましょう。ノートやLINEグループで記録するだけでも、次の事故を防げます。JA・自治体主催の安全講習会も積極的に参加を。

まずは“今日の5分点検”から

  1. ROPSを立てる/シートベルト着用
  2. 路肩・傾斜の危険箇所に目印をつける
  3. 回転部の停止・安全ガードを確認
  4. 水・塩タブレット・日陰を準備
  5. 作業場所を家族・仲間と共有

まとめ

農業は自然と共にある尊い仕事ですが、同時に多くの危険とも隣り合わせです。
毎年236人が命を落とす現実を「他人ごと」として終わらせないために。
今日の一手間が、明日の命を守ります。

参考・出典

  • 農林水産省「令和5年の農作業死亡事故について」(2025年2月26日)
  • 農林水産省「トラクター事故に注意しましょう!」
  • JA共済「農作業事故の実態」
  • 日本農業新聞PR「農作業事故防止への取り組み」
  • 鹿児島県「農作業事故防止対策について」

※本記事は公的機関・団体の公開資料をもとに作成しています。