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排水は「見えない病害対策」──根を守る農地づくりの基本と具体的手法

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■ はじめに:水が多いほど良い、は間違い

畑や水田で「水を切らさないように」という意識は大切ですが、過剰な水分は根の呼吸を奪い、病害の温床になります。
特に近年は集中豪雨が増え、排水不良による根腐れ・立枯病・フザリウム病の発生リスクが高まっています。
この記事では、排水の重要性を病害予防の観点から解説し、実際にできる排水対策を紹介します。


■ なぜ排水が病害予防につながるのか

作物の根は「呼吸器官」でもあります。
土壌中に空気が少なくなると、根が酸素不足に陥り、嫌気性菌(病原菌)が優勢になります。
その結果、次のような病害が発生しやすくなります。

  • 根腐れ病(トマト、ナス、ピーマンなど)

  • 立枯病(ネギ、キャベツ、レタスなど)

  • いもち病(稲)

  • フザリウム萎凋病(キュウリ、スイカなど)

排水の悪い圃場では、薬剤よりもまず「水の逃げ道」を作ることが最優先です。


■ 排水改善の具体的手法

① 畝を高くする(高畝栽培)

・野菜の根が水に浸からないように、標準より5〜10cm高めの畝を作る。
・特に根菜類やトマトなどは高畝が効果的。
・マルチを併用すると雨による土の締まりも防げる。

② 暗渠(あんきょ)排水の設置

・地中に暗渠パイプ(排水管)を通し、地下水を外に逃がす方法。
・施工は手間がかかりますが、長期的には地力の維持と病害予防
に大きく寄与します。
・パイプの上に砕石を敷き、水の通り道を確保すると効果的。

③ 表面排水の改善

・畑の周囲にU字溝明渠を設ける。
・畝間を一定方向に傾け、自然に水が流れるように1〜2%の勾配をつける。
・圃場の出口付近には沈砂池を設置し、泥詰まりを防止する。

④ 土壌改良による排水性向上

・粘土質土壌の場合、堆肥・腐葉土・籾殻などを投入して通気性を上げる。
パーライトバーミキュライトも有効。
・毎年少しずつ改良することで、根張りが良くなり病気が減る。

⑤ 定期的な圃場チェック

・雨の後に水たまりができる場所を記録。
・同じ場所に病害が出やすい場合、排水構造の見直しを。
・小さな溝掘り(溝切り)を行うだけでも改善されることがある。


■ まとめ:水の「通り道」が健康の「通り道」

排水対策は、肥料や農薬よりも地味ですが、**圃場の健康を長く守る最強の“予防医療”**です。
水が抜ける圃場は根が元気になり、病害に強く、収量も安定します。
「水の逃げ道を作る=根の呼吸を守る」――これが、すべての栽培の基本です。

 

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