未来を耕す、農とお金のはなし

― 小さな畑と、家族と、未来のための経済の知恵 ―

【2025年版】米の作付指標が見直しへ:生産調整から“地域の知恵”の時代へ

f:id:AsaForma:20251020071815j:image

2025年、全国の米づくりに新しい動きが見え始めています。
政府が長年続けてきた「作付指標(さくつけしひょう)」――いわば米づくりの“目安表”が、今年見直しの時期を迎えました。

この記事では、新聞等で話題になった「米の作付指標見直し」をわかりやすく解説しながら、今後の農家や家庭菜園にとって何が変わるのかを整理します。


■ 作付指標とは?なぜ必要だったのか?

作付指標とは、各都道府県が「米をどれくらい作るか」の目安を示すための数字です。
例えば、鹿児島県が「前年比98%」とすれば、「去年より少し減らして作りましょう」という意味になります。

これは長年、**米の需給バランスを保つための“国の誘導政策”**でした。
作りすぎれば価格が下がり、作らなければ不足する。
そのため国が、地域ごとのデータをもとに「作りすぎ防止のための数字」を示してきたのです。


■ 2025年はどう変わる?

農林水産省は、2025年産の作付指標について「各地域の自主判断を重視」する方針を明確にしました。
つまり、国が一律に“何%作れ”と指示する時代は終わり
今後は「地域の実情に合わせた調整」へとシフトしていくということです。

日本農業新聞(2025年10月19日)によると、北海道や秋田、山形などの米どころではおおむね前年並み(100〜103%)の指標が示され、
西日本ではやや抑え気味(98〜101%)という結果。
九州では、需要減少や米価安定を見越して、慎重な姿勢が目立ちます。


■ 背景にあるのは「需要の減少」

今回の見直しの根底には、国内の米の消費減少があります。
総務省のデータでは、1人当たりの年間米消費量は昭和37年の118kgから、令和時代には50kg前後まで減少。
パンや麺類、加工食品の普及が進み、家でご飯を炊く回数も減りました。

その結果、米の在庫が増え、生産調整(減反)が長引いてきたのです。
農家からは「もう少し自由に作りたい」「地域の実情に合わせたい」という声も強まっていました。


■ これからの米づくりは「地域経営」へ

今回の見直しは、一見すると「小さな調整」に見えます。
しかし本質的には、“国主導から地域主導”への転換です。

各地域が自分たちの食文化・気候・販売経路を踏まえた「経営的判断」を求められる時代。
それは、単なる米づくりではなく、“地域経営”としての農業への第一歩とも言えるでしょう。

農業は数字だけでなく、暮らしの根っこをつくる仕事です。
だからこそ、これからは「どのくらい作るか」よりも、「誰のために、どんな米を作るか」が問われていく――
そんな時代の変わり目に、私たちは立っているのではないでしょうか。

 

👉「旬の野菜や家庭菜園の裏話はXで更新中 → @https://x.com/sakscsidea