
2025年、全国の米づくりに新しい動きが見え始めています。
政府が長年続けてきた「作付指標(さくつけしひょう)」――いわば米づくりの“目安表”が、今年見直しの時期を迎えました。
この記事では、新聞等で話題になった「米の作付指標見直し」をわかりやすく解説しながら、今後の農家や家庭菜園にとって何が変わるのかを整理します。
■ 作付指標とは?なぜ必要だったのか?
作付指標とは、各都道府県が「米をどれくらい作るか」の目安を示すための数字です。
例えば、鹿児島県が「前年比98%」とすれば、「去年より少し減らして作りましょう」という意味になります。
これは長年、**米の需給バランスを保つための“国の誘導政策”**でした。
作りすぎれば価格が下がり、作らなければ不足する。
そのため国が、地域ごとのデータをもとに「作りすぎ防止のための数字」を示してきたのです。
■ 2025年はどう変わる?
農林水産省は、2025年産の作付指標について「各地域の自主判断を重視」する方針を明確にしました。
つまり、国が一律に“何%作れ”と指示する時代は終わり、
今後は「地域の実情に合わせた調整」へとシフトしていくということです。
日本農業新聞(2025年10月19日)によると、北海道や秋田、山形などの米どころではおおむね前年並み(100〜103%)の指標が示され、
西日本ではやや抑え気味(98〜101%)という結果。
九州では、需要減少や米価安定を見越して、慎重な姿勢が目立ちます。
■ 背景にあるのは「需要の減少」
今回の見直しの根底には、国内の米の消費減少があります。
総務省のデータでは、1人当たりの年間米消費量は昭和37年の118kgから、令和時代には50kg前後まで減少。
パンや麺類、加工食品の普及が進み、家でご飯を炊く回数も減りました。
その結果、米の在庫が増え、生産調整(減反)が長引いてきたのです。
農家からは「もう少し自由に作りたい」「地域の実情に合わせたい」という声も強まっていました。
■ これからの米づくりは「地域経営」へ
今回の見直しは、一見すると「小さな調整」に見えます。
しかし本質的には、“国主導から地域主導”への転換です。
各地域が自分たちの食文化・気候・販売経路を踏まえた「経営的判断」を求められる時代。
それは、単なる米づくりではなく、“地域経営”としての農業への第一歩とも言えるでしょう。
農業は数字だけでなく、暮らしの根っこをつくる仕事です。
だからこそ、これからは「どのくらい作るか」よりも、「誰のために、どんな米を作るか」が問われていく――
そんな時代の変わり目に、私たちは立っているのではないでしょうか。
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